フラの名曲「カイマナヒラ」とは?|歌に描かれた昔のワイキキを歩く
フラを習っていると、一度は耳にすることの多い曲「Kaimana Hila(カイマナヒラ)」。
明るく親しみやすいメロディーで、初心者クラスでも取り上げられることのあるハワイアンソングです。
タイトルの「カイマナヒラ」とは、現在のDiamond Head(ダイヤモンドヘッド/Lēʻahi)を指します。
けれど、この曲の魅力はダイヤモンドヘッドを美しいと歌っているだけではありません。
歌をたどっていくと、カピオラニ公園、ワイキキ、かつて存在したホテル、サーフィン、池に浮かぶ花など、昔のホノルルの風景が次々と現れます。
まるで仲間たちと一緒に、20世紀初頭のワイキキ周辺を散歩しているようなメレなのです。
今回は、カイマナヒラの歴史と歌に登場する場所をたどりながら、フラで踊るときに知っておきたいポイントをご紹介します。
「カイマナヒラ」はどんな曲?
「Kaimana Hila」は、ハワイを代表する作曲家の一人、Charles E. King(チャールズ・E・キング)によって作られたハワイアンソングです。
現在まで多くの歌手やフラダンサーによって歌い、踊り継がれてきました。
ハワイ大学の歴史的音源資料でも、Charles E. King作曲の「Kaimana Hila」が残されており、Hula Kuʻiの音楽として分類されています。
曲の内容は、仲間たちがワイキキ周辺へ出かけ、さまざまな場所や風景を楽しむ様子を描いたものです。
ダイヤモンドヘッドだけを讃える歌というより、当時のワイキキ周辺を巡る楽しい一日の記憶が歌になったものと考えると、その世界が見えやすくなります。
「Kaimana Hila」という名前の意味
現在、ダイヤモンドヘッドの伝統的なハワイ語地名として使われるのはLēʻahi(レアヒ)です。
一方、「Kaimana Hila」は英語の「Diamond Hill」に由来するハワイ語化された呼び方です。
「hila」は、英語の「hill」がハワイ語の音に合わせて取り入れられた言葉として辞書にも記録されています。
現在でも「Kaimana Hila」と聞けば、ダイヤモンドヘッドを指す表現として理解されています。
つまり、曲のタイトルそのものにも、西洋との接触以降のハワイの言語文化が表れているのです。
カイマナヒラの歌詞には複数の形がある
「カイマナヒラ」の歌詞をインターネットで調べると、少しずつ違う歌詞が見つかることがあります。
これは必ずしも、どれか一つが間違っているということではありません。
Charles E. Kingが残した初期の形と、後に広く歌われるようになった形には、歌詞やメロディーに違いがあります。
現在よく耳にするバージョンは、後の時代に広まった歌い方の影響も受けています。
また、演奏やフラの場では、すべての節を歌わず、いくつかの節を選んで構成することもあります。
そのため、「この4節だけがカイマナヒラの正しい歌詞」と決めてしまうより、時代の中で歌い継がれながら複数の形が生まれてきた曲として理解する方が自然です。
カイマナヒラの物語は、昔のワイキキを巡る小旅行
このメレの面白さは、場所から場所へと場面が移っていくところにあります。
現代のワイキキしか知らない方でも、歌に登場する場所を一つずつ調べていくと、昔のホノルルの姿が見えてきます。
カイマナヒラ|遠くから眺めるダイヤモンドヘッド
曲の中心となるのが、堂々とそびえるカイマナヒラです。
ダイヤモンドヘッドは現在でもワイキキを象徴する景観ですが、昔の人々にとっても印象的な存在でした。
海辺やワイキキから眺めれば、その独特な山の輪郭が大きく空に浮かび上がります。
メレでは、その姿を見上げ、美しさを楽しむ人々の様子が描かれています。
現在の州立公園では「Diamond Head(Lēʻahi)」という名称が使われています。
カピオラニ公園|「lina poepoe」が表すもの
元の記事では「lina poepoe」を「円形の美しい景色」と説明していましたが、ここは重要な修正点です。
これは、当時カピオラニ公園にあった円形・楕円形の競馬場を表しているとされています。
現在のカピオラニ公園から競馬場を想像するのは難しいかもしれませんが、19世紀後半の公園には競馬場がありました。
カイマナヒラは、単に自然の景色を描くだけでなく、当時そこで人々が楽しんでいた娯楽まで歌っているのです。
こうした歴史を知ってから踊ると、「公園」という一言から見えてくる景色も大きく変わります。
ワイキキ|現在とは違うホテルの風景
現在のワイキキには高層ホテルが立ち並んでいます。
しかし、カイマナヒラが生まれた時代のワイキキは、今とは大きく異なる景観でした。
曲の初期の歌詞には、ワイキキの建物やホテルを眺める場面も登場します。
観光地としてのワイキキが発展していく時代の空気が、メレの中に残っているとも言えるでしょう。
Makee ʻAilana|公園にあった小さな島
歌に登場するMakee ʻAilana(マキー・アイラナ)も興味深い場所です。
現在は当時と同じ姿では残っていませんが、かつてカピオラニ公園周辺にあった小さな島として知られています。
そこでは、水面に浮かぶリリーの花が歌われています。
カイマナヒラというと海や山を思い浮かべますが、こうした静かな水辺の景色もメレの一部なのです。
Seaside Inn|ワイキキの海とサーフィン
サーフィンの場面も、カイマナヒラの魅力の一つです。
初期の歌詞では、かつてワイキキに存在したSeaside Inn周辺で、波に乗る人々の姿が描かれています。
現在ではサーフィンは世界的なスポーツですが、heʻe nalu(波乗り)はハワイに古くから根付いてきた文化です。
海の上を滑るように進むサーファーの姿は、フラでも動きをイメージしやすい場面です。
ʻĀinahau|王族の記憶が残る場所
初期のカイマナヒラには、ʻĀinahau(アイナハウ)も登場します。
ʻĀinahauは、ハワイ王族と深く関係したワイキキの歴史的な土地です。
プリンセス・カイウラニの邸宅があった場所としても知られています。
現在のワイキキを歩くだけでは見えにくい王朝時代の記憶も、このメレを通してたどることができます。
歌詞を直訳するだけでは見えない「カイマナヒラ」の面白さ
ハワイ語のメレを日本語へ訳すとき、単語だけを置き換えると意味が分かりにくくなることがあります。
カイマナヒラは、そのよい例です。
「円形の線」と訳される言葉だけを見ても、それが競馬場だとはなかなか分かりません。
地名についても、その場所の昔の姿を知らなければ、歌の情景は十分に想像できません。
だからこそフラでは、単なる日本語訳だけでなく、そのメレが作られた時代や土地について知ることが大切です。
歌詞の背景を知ることで、ハンドモーションや目線にも自然と意味が生まれてきます。
カイマナヒラをフラで踊るときに意識したいこと
「カイマナヒラには、この決まった振り付けしかない」というわけではありません。
同じメレでも、クムフラや先生、ハーラウによって振り付けが異なることがあります。
ですから、インターネットで別の踊りを見つけても、自分が習っている振り付けと違うからといって、どちらかが間違っているとは限りません。
踊るときに大切なのは、先生から教わった動きを尊重しながら、メレの情景を理解することです。
- カイマナヒラを見上げるときは、その大きさや位置を意識する
- 場所が変わるたびに、頭の中の景色も切り替える
- サーフィンの場面では、海や波の流れを思い浮かべる
- 公園の場面では、現在ではなく当時の景色を想像する
- 動きだけでなく、目線や表情でも旅の楽しさを表現する
こうしてメレの中を実際に歩いているような気持ちで踊ると、振り付けだけを覚えていたときとは違ったフラになっていきます。
初心者にも親しまれる理由
カイマナヒラは、明るく親しみやすいメロディーを持つ曲です。
そのため、初心者がハワイアンミュージックやフラに親しむ入口として使われることもあります。
ただし、「定番曲だから簡単」とは限りません。
フラの難易度は、曲そのものだけではなく、先生がどのようなステップやハンドモーションを組み合わせるかによって変わります。
それでも、場所ごとに情景が変わるカイマナヒラは、メレの意味と身体表現の関係を学ぶのに、とても興味深い一曲です。
初心者に親しみやすいハワイアンソングについては、「フラダンス初心者におすすめの定番曲|踊ってみたいハワイアンソング5選」でも紹介しています。
カイマナヒラから見えてくる、昔のワイキキ
現在のワイキキを訪れると、高層ホテルやショッピング施設が並び、多くの旅行者で賑わっています。
けれど、カイマナヒラの世界に耳を傾けると、まったく違う景色が浮かんできます。
競馬が行われていたカピオラニ公園。
水辺に浮かぶリリー。
昔のホテル。
波に乗る人々。
王族の記憶が残るʻĀinahau。
そして、その向こうにそびえるダイヤモンドヘッド。
一曲の中に、当時のワイキキ周辺の風景や人々の楽しみが残されているのです。
こうして考えると、メレは音楽であると同時に、土地の記憶を伝える小さな歴史資料のようにも感じられます。
「Kaimana Hila」と「Lēʻahi」はどう違う?
ここで、もう一度名前について整理しておきましょう。
現在のハワイ州立公園でも使われている伝統的な地名はLēʻahiです。
一方、「Kaimana Hila」はDiamond Hillに由来する外来語的な表現で、歌のタイトルとして広く親しまれてきました。
どちらも現在ダイヤモンドヘッドを指して使われますが、その言葉が生まれた背景は異なります。
この違いを知ることも、ハワイ語や土地の歴史を学ぶ面白さの一つです。
ハワイアンミュージックは土地の記憶を残している
カイマナヒラだけでなく、ハワイのメレには実際の土地が数多く登場します。
山、海、雨、風、花、街、家。
その場所を知ることで、一曲の意味が急に立体的に見えてくることがあります。
そして、そこにフラが加わることで、メレの言葉が身体表現へと変わります。
ハワイアンミュージック全体については、「ハワイアンミュージックの魅力|ウクレレ・メレ・伝統音楽の楽しみ方」もあわせてご覧ください。
まとめ|カイマナヒラは昔のワイキキを旅するメレ
カイマナヒラは、ダイヤモンドヘッドの美しさだけを歌った曲ではありません。
仲間たちがワイキキ周辺へ出かけ、カピオラニ公園や水辺、ホテル、サーフィン、ʻĀinahauなどを楽しむ姿が描かれています。
そして、その背景を知ることで、今では姿を変えてしまった昔のワイキキが見えてきます。
フラでこの曲を踊るときも、手順だけを追うのではなく、一つ一つの場所を頭の中に思い浮かべてみてください。
ダイヤモンドヘッドを見上げる。
公園へ出かける。
海で波に乗る人々を見る。
水辺の花を眺める。
そんな一日の小旅行を身体で語っていると考えると、カイマナヒラはさらに楽しい曲になります。
何度も踊ってきた一曲でも、その歴史や土地を知ることで、今までとは少し違った景色が見えてくるのではないでしょうか。