『Mele Kalikimaka』|島のクリスマス定番を踊る—歌詞の言葉遊びと振付ポイント
ハワイの風と共にやってくるクリスマス
日本や欧米のクリスマスが雪と暖炉のイメージなら、ハワイのクリスマスは陽光と海風。
『Mele Kalikimaka』は、その南国らしい明るさを音にした、ハワイのクリスマスを象徴する名曲です。
「メレ・カリキマカ」とは、英語の “Merry Christmas” をハワイ語の発音で表した言葉。
母音と子音の組み合わせが異なるハワイ語では、“r” や “s” の音がないため、
“Merry Christmas” が “Mele Kalikimaka” として伝わったのです。
このユニークな言葉の響きこそ、ハワイの温かい文化の象徴。
異なる言語や風習を自分たちらしく受け入れ、
“アロハ”の心で祝う島のクリスマスが、この曲の中に息づいています。
曲の背景と誕生秘話
『Mele Kalikimaka』は1949年、ハワイ出身の作曲家R. Alex Andersonによって生まれました。
当時、ハワイで働いていた人々は、ラジオから流れる「White Christmas」を聴きながら、
「雪のない島で祝うクリスマスもいいじゃないか」と笑い合っていたそうです。
その声を受けてアンダーソンは、陽気で軽やかなスウィング調の曲を作曲。
のちにビング・クロスビーとアンドリューズ・シスターズが歌って世界的にヒットしました。
以来、この曲はハワイのクリスマス定番として毎年ラジオやホテルのショーで流れ、
現在もフラの舞台で欠かせない一曲となっています。
歌詞に込められた言葉遊びとメッセージ
歌詞の中で繰り返される “Mele Kalikimaka is the thing to say on a bright Hawaiian Christmas Day”
(晴れたハワイのクリスマスの日に「メレ・カリキマカ」と言うのさ)という一節は、
南の島らしい軽快さにあふれています。
「Mele」は“歌”や“祝いの言葉”を意味し、「Kalikimaka」は“Christmas”の音訳。
つまりこのフレーズは単に挨拶ではなく、歌うように祝う言葉なのです。
ハワイでは祝祭のたびに歌と踊りが欠かせません。
『Mele Kalikimaka』もまた、“歌で幸せを贈る”というハワイの文化をそのまま表しています。
後半に出てくる “Here we know that Christmas will be green and bright”
(ここではクリスマスは緑と光に包まれている)という歌詞は、
ハワイの自然そのものへの感謝の表現。
雪の代わりに海風と太陽で祝う、島のクリスマスの美しい比喩です。
フラで踊るときのポイント
この曲の魅力は、フラ・アウアナ(現代フラ)ならではの軽快さにあります。
アップテンポでジャズ風のリズムですが、振付では「楽しさ」と「優雅さ」のバランスが大切です。
- 1. 手の動きは“贈り物”のイメージで
両手を前へ差し出し、ゆるやかに回して「Mele Kalikimaka!」と微笑むように踊ります。
“贈る” “受け取る” の動作を繰り返すと、フラらしい温かさが伝わります。 - 2. 腰のスウィングは波のように
カヒコよりも柔らかく、海風が体を包むような自然なスウェイを意識。
足のリズム(アミやヘラ)を控えめにして、上半身のラインを際立たせましょう。 - 3. 表情は“祝福”の笑顔
この曲は聴く人に喜びを分ける踊り。
無理に笑うのではなく、心から「楽しい」と感じる瞬間を表情にのせて。
ステージで映える演出アイデア
衣装は、クリスマスカラーの赤・緑・白を基調にしながら、
ヤシの葉モチーフやプルメリア柄のパウスカートを合わせると、ハワイらしさが際立ちます。
髪飾りやレイに小さなポインセチアを添えるのもおすすめです。
舞台照明は温かみのあるアンバー系で統一し、背景に波や南国のイラストを映すと、
“雪のないクリスマス”の世界観が一層深まります。
また、子どもたちのグループがこの曲を踊ると、
自然な笑顔と小さな動きが観客をほっこりさせてくれます。
まさに「Mele Kalikimaka=幸せを贈る踊り」なのです。
フラで感じるハワイのクリスマス精神
『Mele Kalikimaka』の魅力は、明るい旋律の中にある温かい祈りです。
雪がなくても、サンタがサーフィンをしていても、
そこにあるのは“感謝と愛を伝える心”。
フラでこの曲を踊ることは、まさにアロハを体現する時間です。
ハワイの人々にとって、クリスマスは特別な日でありながら、
日常の延長線にある“共に笑う日”でもあります。
この曲を踊ると、自然と心がやわらぎ、
「今年も笑顔でありがとう」と伝えたくなる――
そんな小さな奇跡を感じさせてくれる一曲です。
おわりに ― 音楽がつなぐアロハの贈り物
『Mele Kalikimaka』は、時代を越えて世界中で愛されるハワイの宝物。
言葉の遊び心と軽やかなリズム、そして何よりも“アロハ”の心が詰まっています。
フラで踊るたびに、あなた自身が“贈り物”になる――
それがこの曲が持つ本当のメッセージなのです。