モアナの踊りはフラ?タヒチアンダンス?ポリネシアの踊りの違いをやさしく解説
映画『モアナと伝説の海』を見ていると、島の人々が音楽に合わせて踊る印象的な場面が登場します。
その姿を見て、フラを知っている方なら、
「これはフラなの?」
「それともタヒチアンダンス?」
と気になったことがあるかもしれません。
実は、この質問に対して「これはフラです」と一言で答えることはできません。
『モアナ』の世界は、ハワイだけをモデルにしているのではなく、南太平洋に広がるポリネシアのさまざまな文化から着想を得て作られています。
そのため、作品に登場する音楽や踊り、衣装、航海文化などにも、ポリネシア各地を思わせるさまざまな要素を見ることができます。
今回は、『モアナ』の踊りを入り口に、フラ、タヒチアンダンス、そしてポリネシアの踊りの違いをやさしく見ていきましょう。
モアナの踊りはフラなの?
結論から言うと、『モアナ』に登場する踊りすべてを「フラ」と考えるのは少し違います。
フラは、ハワイで受け継がれてきた伝統文化です。
一方、『モアナ』の舞台であるモトゥヌイは架空の島であり、作品全体にはハワイだけでなく、タヒチ、サモア、トンガ、ニュージーランドのマオリなど、広いポリネシア世界を思わせる文化的要素が取り入れられています。
そのため、映画の踊りを見て、
- フラのように見える動き
- タヒチアンダンスを思わせる力強いリズム
- ポリネシア各地の集団舞踊を思わせる表現
を感じることがあります。
大切なのは、「南国の踊り=全部フラ」ではないということです。
ポリネシアには、島や地域ごとに異なる歴史や言葉があり、それぞれ独自の踊りが発達してきました。
そもそも「ポリネシア」とは?
ポリネシアとは、太平洋に広がる非常に大きな文化圏です。
「ポリネシア」という名前は、ギリシャ語の「多くの島々」という意味に由来し、一般にハワイ、ニュージーランド、イースター島を結ぶ広大な三角形の内側にある島々を指します。
その中には、
- ハワイ
- タヒチを含むフランス領ポリネシア
- サモア
- トンガ
- クック諸島
- ニュージーランドのマオリ文化
などがあります。
これらの地域には共通する文化的なつながりが見られる一方で、それぞれの島には独自の言語、神話、音楽、衣装、踊りがあります。
つまり、「ポリネシアンダンス」という大きな枠の中に、ハワイのフラやタヒチのʻOri Tahitiなどがあると考えると分かりやすいでしょう。
ハワイの踊り「フラ」とは?
フラ(Hula)は、ハワイで何世代にもわたって受け継がれてきた伝統的な表現文化です。
日本では「フラダンス」という名前で親しまれていますが、本来「Hula」という言葉自体に踊りという意味が含まれています。
フラの大きな特徴は、メレ(歌や詩)の物語を身体で表現することです。
手や腕の動きだけではなく、足運び、重心、腰の動き、視線、表情などを使いながら、
- 海
- 波
- 風
- 花
- 山
- 愛する人
- 神々の物語
- 土地の歴史
などを表現していきます。
そのためフラは、単に音楽に合わせて身体を動かす踊りではありません。
言葉や物語を身体で伝える文化という側面を持っています。
フラについて詳しく知りたい方は、「フラダンスとは?初心者が知っておきたい基本や魅力」もあわせてご覧ください。
フラにはカヒコとアウアナがある
フラにはさまざまな表現がありますが、初心者向けには大きくカヒコとアウアナという二つのスタイルを知っておくと分かりやすいでしょう。
フラ・カヒコ(Hula Kahiko)
カヒコは、古典的・伝統的なフラとして知られています。
チャントや打楽器に合わせ、神話、歴史、自然、土地などを力強く表現することがあります。
「フラ=ゆったり優雅」というイメージを持っている方がカヒコを見ると、その力強さに驚くかもしれません。
フラ・アウアナ(Hula ʻAuana)
アウアナは、近代以降に発展したフラです。
ウクレレやギターなどを使ったハワイアンミュージックに合わせて踊られることが多く、日本で一般的にイメージされる優雅なフラはこちらに近いでしょう。
ただし、カヒコもアウアナも、単に振り付けを見せるのではなく、メレの意味を踊りによって伝えるという大切な部分は共通しています。
タヒチアンダンス「ʻOri Tahiti」とは?
日本で「タヒチアンダンス」と呼ばれている踊りは、タヒチではʻOri Tahiti(オリ・タヒチ)と呼ばれています。
ʻOriはタヒチ語で「踊る」という意味を持ち、文字通り「タヒチの踊り」です。
ʻOri Tahitiもまた、単なる観光ショーとして生まれたものではありません。
タヒチの歴史や伝説、人々の暮らし、自然とのつながりなどを伝えてきた大切な文化です。
特徴の一つとして挙げられるのが、打楽器による力強いリズムです。
トエレと呼ばれる木製の打楽器などが刻む速いリズムに合わせ、腰や脚をダイナミックに使う踊りもあり、その迫力はフラとはまた違った魅力を持っています。
フラとタヒチアンダンスは何が違う?
初めて見ると似ているように感じるフラとタヒチアンダンスですが、比べてみるとさまざまな違いがあります。
| 項目 | フラ | タヒチアンダンス(ʻOri Tahiti) |
|---|---|---|
| 主な地域 | ハワイ | タヒチ・フランス領ポリネシア |
| 文化 | ハワイ文化 | タヒチ文化 |
| 音楽 | チャント、打楽器、ハワイアンミュージックなど | トエレなどの打楽器、歌など |
| 動き | 重心移動と身体全体で物語を表現 | 腰や脚を使った速く力強い表現も多い |
| 表現 | メレの言葉や情景を伝える | 物語、感情、伝統、生命力などを表現 |
もちろん、どちらにもゆったりした踊りや力強い踊りがありますので、「フラはゆっくり、タヒチアンは速い」とだけ覚えてしまうのは正確ではありません。
一番大切な違いは、それぞれが異なる土地・言語・歴史から生まれた文化であることです。
モアナの踊りが「フラっぽくもタヒチアンっぽくも」見える理由
ここまで分かると、『モアナ』の踊りが一つの名前だけでは説明しにくい理由も見えてきます。
モアナの物語は、特定の一つの島だけをそのまま描いたものではありません。
広大なポリネシア世界に伝わる神話、航海文化、音楽、自然とのつながりなど、さまざまな要素から着想を得て作られています。
だからこそ、踊りを見ても、
「フラに似ている」
と感じる部分もあれば、
「タヒチアンダンスのように力強い」
と感じる部分もあります。
しかし、それを無理にどちらか一つへ分類するよりも、ポリネシアの文化を背景に持つ作品として見るほうが、モアナの世界をより深く楽しむことができます。
マウイも「ハワイだけの神様」ではない
『モアナ』に登場する半神半人の英雄マウイも、ポリネシア文化の広がりを知るうえで興味深い存在です。
マウイにまつわる物語はハワイだけではなく、タヒチ、サモア、トンガ、ニュージーランドなど、ポリネシアの広い地域にさまざまな形で伝えられています。
島によって物語には違いがありますが、島を釣り上げる、太陽に関わる偉業を成し遂げるなど、共通するモチーフも見られます。
『モアナ』を見ると、「マウイはハワイ神話の人物」と思ってしまいがちですが、実際にはもっと広いポリネシア世界につながる英雄なのです。
マウイについては、「マウイとは?いたずら者なのに英雄と呼ばれる理由」でも詳しく紹介しています。
「南国の踊り」は全部同じではない
日本にいると、ハワイ、タヒチ、サモアなどの文化をまとめて「南国文化」と考えてしまうことがあります。
しかし、それぞれの島には独自の歴史と言葉があります。
これは、日本、中国、韓国などが同じアジアにあっても、それぞれ異なる文化を持っているのと少し似ています。
ポリネシアの島々にも交流や共通する祖先文化がありながら、その土地ごとに独自の文化が育まれてきました。
フラを見るときにはハワイの文化として、ʻOri Tahitiを見るときにはタヒチの文化として向き合う。
その違いを知ることで、それぞれの踊りがさらに魅力的に見えてくるのではないでしょうか。
モアナを見るとポリネシア文化がもっと面白くなる
『モアナと伝説の海』は、海を越えて新しい世界へ進む少女の物語として楽しめる作品です。
しかし、その背景にあるポリネシア文化を少し知ってから見ると、これまで気づかなかったものが見えてきます。
- なぜ海がこれほど大切に描かれているのか
- なぜ人々は歌いながら踊るのか
- なぜ祖先の物語が大切なのか
- なぜ航海することが特別な意味を持つのか
- マウイという英雄はどこから生まれたのか
映画の中にある一つひとつの表現が、単なる南国らしい演出ではなく、広いポリネシア世界につながっていることが分かってきます。
よくある質問|モアナとポリネシアの踊り
モアナが踊っているのはフラですか?
すべてをフラと呼ぶことはできません。『モアナ』はハワイだけでなく、広いポリネシア文化から着想を得た作品です。そのため、踊りにもさまざまなポリネシア文化を思わせる表現を見ることができます。
フラとタヒチアンダンスは同じですか?
同じではありません。フラはハワイ、ʻOri Tahitiはタヒチで受け継がれてきた文化です。ポリネシアという大きな文化圏の中にありますが、それぞれ異なる歴史・言語・音楽・表現を持っています。
ポリネシアンダンスとは何ですか?
ポリネシア地域のさまざまな踊りをまとめて表現するときに使われる言葉です。フラやʻOri Tahitiなども広い意味ではポリネシアの踊りに含まれますが、それぞれ独立した文化として理解することが大切です。
タヒチアンダンスは腰だけで踊るのですか?
いいえ。腰の動きが印象的な踊りもありますが、脚、腕、上半身、表情など身体全体を使って表現します。また、ʻOri Tahitiにもさまざまなスタイルがあります。
まとめ|モアナの踊りからポリネシアの広い世界へ
『モアナ』に登場する踊りを見て、「これはフラなのかな?」と思ったことをきっかけに調べていくと、その向こうには想像以上に広いポリネシアの世界があります。
フラはハワイの文化。
ʻOri Tahitiはタヒチの文化。
そして、その両方を含む大きな文化圏がポリネシアです。
似ている部分があるのは、海を越えてつながってきた島々の長い歴史があるからです。
しかし、それぞれの踊りには、その土地で暮らしてきた人々の言葉、歴史、自然、神話、そして祖先への思いが込められています。
『モアナ』をきっかけにフラを知った方も、フラをきっかけに『モアナ』を見た方も、ぜひその先にあるポリネシア文化にも目を向けてみてください。
きっと、映画の海や歌、そして踊りが、これまでとは少し違って見えてくるはずです。