王族のレイ文化|王家がまとうレイの種類と意味、その歴史をひも解く
王族が身にまとう“レイ”とは──ただの装飾ではない象徴
ハワイでレイは、歓迎・感謝・祝福などを表す美しい文化として知られています。
しかし、古代ハワイ王族(アリイ)にとってのレイは、それ以上に重要な「権威・血統・神聖性」を象徴する存在でした。
身につける素材は厳密に決められ、時には特定の家系のみが使用を許されるものもありました。
王族のレイを知ることは、ハワイの精神文化を知ることにつながります。
王族だけが身につけた“神聖なレイ”の種類と意味
古代のハワイ社会では、身分ごとに身につけられるレイが異なり、特に王族は「神に選ばれた存在」として特別なレイを着用しました。ここでは代表的なものを紹介します。
- レイ・ニウヒ (Lei Niho ʻĪlio)
サメの歯(ニホ)で作られた勇敢・力の象徴。戦士王や高位の酋長が身につけた。 - レイ・ライマヌ(Lei Laimana)
牙や骨を用いたレイ。血統や家系を示し、高位アリイの象徴とされた。 - レイ・フラ(Lei Hulu)
鳥の羽で作られたレイ。色ごとに権力や役割を示し、特に金色の羽は「王のしるし」。 - レイ・マイレ(Lei Maile)
神聖な儀式で使われる代表的な植物レイ。平和・絆・祈りを意味し、王族の結婚式や調停に用いられた。 - レイ・パラパライ(Lei Palapalai)
フラの儀式にも使われるシダ。王族の儀式や祈りの場で重要とされた。
これらは単なるアクセサリーではなく、「立場・祈り・神聖性を可視化する儀式の道具」だったのです。
レイ・フル(Lei Hulu)──王の象徴としての“羽のレイ”
羽根で作られたレイ・フルは、特に王族の象徴として知られています。
ハワイでは鳥は「神々の使い」とされ、その羽根にはマナ(霊力)が宿ると考えられていました。
中でも有名なのが、黄金色の羽を持つオオハシヨシキリ(ʻōʻō)やイイヴィ(ʻiʻiwi)の羽を使ったレイ。
この色は“神聖・王権・光”を象徴し、王族のみに許された色とされました。
羽のレイは作るのに膨大な時間がかかり、時には家系の宝として代々受け継がれました。
なぜ“マイレのレイ”が王族の儀式に使われたのか
マイレは古代から“神々が好む植物”とされ、和解・誓い・神とのつながりを象徴しました。
王族の結婚式、調停儀式、神事などで必ずといってよいほど使用されています。
マイレのレイは香りがやわらかく、巻くとしなやかに身体に馴染むのが特徴。
その姿は王族と自然(=神)との調和を表すものとして大切にされました。
レイは“政治の象徴”でもあった
王族が身につけるレイは、政治的な意味も持っていました。
あるレイを授けることは「地位を認める」「家系を継ぐ」「連帯を示す」など、現代でいう“任命書”のような役割を果たしました。
特に王族同士の会談では、贈られたレイの種類によって
「同盟」「親族関係」「支持」などが暗示されることもありました。
レイは“言葉なきメッセージツール”でもあったのです。
近代で受け継がれた“王のレイ”──カラーカウアの復興
19世紀、宣教師時代の影響で多くの伝統が失われる中、
カラーカウア王(メリーモナーク)はレイ文化を積極的に復活させました。
王室の式典に伝統的なレイを採用し、失われかけた技術や材料を保護したのです。
これにより、王族のレイ文化は再び公に姿を取り戻し、
現代ハワイの文化復興の象徴となりました。
まとめ|レイは王族と神をつなぐ“静かな言葉”だった
王族がまとうレイは、単なる装飾でもお祝いの象徴でもなく、
“血統・祈り・権威・神聖性”を映し出す大切な文化でした。
種類ごとに意味があり、その背景には長い歴史と物語が息づいています。
レイを通してハワイ文化を見つめると、王族が守り続けた精神や価値観が、
今も静かに受け継がれていることに気づくことができます。