なぜこの曲は涙を誘うのか|フラダンサーなら知っておきたいメレの物語
フラを踊っていて、理由も分からないのに、ふっと胸がいっぱいになる瞬間はありませんか。
音楽が流れた途端、自然と呼吸が変わり、手の動きがやさしくなり、気づけば涙がにじんでいる。
そんな経験をしたことがあるフラダンサーは、きっと少なくないと思います。
「この曲、どうしてこんなに心に響くんだろう」
今日は、そんな疑問にそっと寄り添いながら、メレの物語についてお話ししていきます。
意味を知らなくても、心が動く理由
メレは、ただの「歌」ではありません。
そこには、ハワイの人々が生きてきた時間、守ってきた土地、そして大切な人への想いが、そのまま息づいています。
たとえハワイ語の意味をすべて理解していなくても、声の響きや旋律の流れを通して、その感情は自然と伝わってきます。
それは、メレが「説明するための歌」ではなく、「感じ合うための歌」だからなのかもしれません。
メレは“記憶”を運ぶもの
ハワイでは、文字よりも先に、言葉と歌が人の想いをつないできました。
出来事、風景、喜びや悲しみ。
それらはすべて、メレとして語り継がれてきたのです。
大切な人との別れを歌ったメレ。
もう戻れない日々を想うメレ。
静かな祈りを込めたメレ。
それらは決して過去のものではなく、今もなお、歌われ、踊られることで生き続けています。
フラダンサーが物語を知るということ
同じ振りを踊っていても、メレの背景を知った瞬間、手の動きや視線が変わることがあります。
それは「表現しよう」と意識するからではなく、自然と心がその物語に寄り添うからです。
誰かを想う歌なら、視線はやわらかく。
祈りのメレなら、呼吸は深く。
土地を讃える歌なら、足元にしっかりと重心が落ちる。
踊りが説明ではなく、祈りに近づく瞬間だと感じます。
なぜ、涙がこぼれるのか
涙が出るのは、悲しいからだけではありません。
懐かしさ、安心感、そして「思い出す」という感覚。
メレを通して、自分自身の大切な記憶や、誰かへの想いが静かに呼び起こされるとき、心は自然と揺れ動きます。
それは弱さではなく、メレときちんとつながっている証なのだと思います。
踊り続ける中で、また出会うメレ
同じ曲でも、年齢や経験によって感じ方が変わるのも、メレの魅力です。
以前は気づかなかった言葉が、ある日突然胸に響くこともあります。
だからこそ、焦らず、比べず、
今の自分が感じたことを大切にしてほしいと思います。
メレは、いつも少し先で、静かに待ってくれています。
おわりに
もし次に、その曲を踊る機会があったら、
「どんな想いが込められているのかな」と、そっと耳を澄ませてみてください。
きっと、今までとは少し違う景色が、心の中に広がるはずです。
メレは、踊る人の人生に寄り添ってくれる、大切な存在なのです。