映画『ブルー・ハワイ』で見るフラ|エルヴィスと1960年代ハワイの見どころ
エルヴィス・プレスリーとハワイ。
その組み合わせを世界中に強く印象づけた映画の一つが、1961年公開の『ブルー・ハワイ(Blue Hawaii)』です。
青い海、椰子の木、アロハシャツ、ウクレレ、ハワイアンミュージック、そしてフラ。
現在でも多くの人が思い浮かべる「南国ハワイ」のイメージが、映画の中に次々と登場します。
ただし、『ブルー・ハワイ』はハワイ文化を記録したドキュメンタリー作品ではありません。
そこに描かれているのは、1960年代のハリウッド映画が、観光地としてのハワイをどのように表現していたのかという、一つの時代の姿でもあります。
今回は、映画に登場するフラやハワイアンミュージック、ロケ地などに注目しながら、『ブルー・ハワイ』をフラを学ぶ視点から楽しむポイントをご紹介します。
映画『ブルー・ハワイ』とは?
『ブルー・ハワイ』は、1961年に公開されたエルヴィス・プレスリー主演のミュージカル映画です。
エルヴィスが演じるのは、兵役を終えてハワイへ戻ってきた青年チャド・ゲイツ。
裕福な家庭に生まれたチャドは、母親から家業に入ることを期待されますが、それを断り、恋人マイレが働く旅行会社で観光ガイドとして働き始めます。
物語は、美しいハワイの風景を背景に、恋愛や家族との関係、観光、そして音楽を明るく描いていきます。
エルヴィスの歌と南国ハワイの景色が組み合わされた本作は、現在でも彼の代表的な映画の一つとして知られています。
本当にハワイで撮影された『ブルー・ハワイ』
この映画の大きな魅力の一つが、実際のハワイで撮影された風景です。
主要なロケ撮影には、オアフ島とカウアイ島が使われました。
映画では、青い海やビーチ、緑豊かな山々、ホテルやリゾートなど、1960年代初頭のハワイを見ることができます。
現在とは街並みやホテルの雰囲気も異なるため、昔のハワイを知る映像として見ても興味深い作品です。
特にカウアイ島にあったココ・パームス・リゾートは、映画後半の重要な舞台として登場します。
フラや音楽だけでなく、当時のハワイの景色にも注目してみてください。
映画に登場するフラを見る前に知っておきたいこと
『ブルー・ハワイ』には、フラを思わせる踊りや、ハワイアンショーの雰囲気を取り入れた場面が登場します。
ただし、映画に出てくる踊りを、そのまま「伝統的なハワイのフラ」だと考える必要はありません。
本作はあくまでハリウッドのミュージカル映画です。
観客に「ハワイらしさ」を分かりやすく伝えるため、衣装や音楽、踊り、舞台設定には映画的な演出が加えられています。
そのため、フラを学んでいる方が見る場合は、
「これは伝統的なフラをそのまま記録した映像なのだろうか」
と考えるよりも、
「1960年代のアメリカ映画では、フラやハワイがどのように表現されていたのだろう?」
という視点で見ると、さらに面白くなります。
視聴ポイント①|踊りと音楽がどう組み合わされているか
映画の中でフラやハワイアンショーが登場したら、踊り手だけでなく音楽にも耳を傾けてみてください。
本来のフラでは、メレに歌われている言葉と身体の動きが深く結びついています。
一方、『ブルー・ハワイ』の音楽には、ハワイアンテイストの楽曲だけでなく、ポップスやロックンロールなど、当時のアメリカ音楽の要素も取り入れられています。
その代表的な曲の一つが、「Rock-A-Hula Baby」です。
タイトルからも分かるように、ロックンロールとハワイのイメージを組み合わせた楽曲です。
これを伝統的なハワイアンソングとして見るのではなく、1960年代のアメリカン・ポップカルチャーが「フラ」をどのように取り入れていたのかを見ると面白いでしょう。
視聴ポイント②|フラの身体の使い方を観察してみる
映画の中でフラの踊り手が登場したら、衣装だけでなく、身体の動きにも注目してみましょう。
例えば、次のような部分です。
- 膝をどのように使っているか
- 左右への重心移動
- 上半身と下半身の動き方
- 腕や手をどの高さで動かしているか
- 顔や目線をどこへ向けているか
現在自分が教室で習っているフラと比べると、「ずいぶん違う」と感じる部分もあるかもしれません。
それも、この映画を見る楽しさの一つです。
映画の中の踊りと、現在ハーラウで学んでいるフラを比べることで、時代による表現の違いにも気づくことができます。
フラのハンドモーションについては、「フラの手は、なぜ花や波を描くの?|指先に込められた物語」でも詳しく紹介しています。
視聴ポイント③|映画の主題歌「Blue Hawaii」
映画のタイトルにもなっている「Blue Hawaii」。
エルヴィス・プレスリーを代表するハワイアンナンバーのように感じる曲ですが、実はこの映画のために新しく作られた曲ではありません。
「Blue Hawaii」は、1930年代から知られていたアメリカのポピュラーソングです。
つまり、古くからハワイで歌い継がれてきたハワイ語のメレではなく、アメリカの音楽や映画文化の中で作られた「ハワイをイメージした楽曲」です。
この違いを知ると、「ハワイアンミュージック」という言葉の中にも、さまざまな音楽があることが分かります。
ハワイ語で作られたメレ。
ハワイの作曲家が作った音楽。
そしてアメリカ本土で作られた、ハワイをイメージしたポピュラーソング。
それぞれ背景が異なります。
視聴ポイント④|リリウオカラニ女王の「Aloha ʻOe」
映画の音楽の中には、本当にハワイ王国の歴史と深く結びついた作品も登場します。
その一つが、「Aloha ʻOe(アロハ・オエ)」です。
Aloha ʻOeは、ハワイ王国最後の君主となったリリウオカラニ女王が作曲した作品です。
美しい旋律とともに、別れを惜しむ思いが込められたハワイを代表するメレの一つとして、現在まで歌い継がれています。
『ブルー・ハワイ』では、エルヴィス・プレスリーによるAloha ʻOeを聴くことができます。
ハリウッド映画の中で、ハワイ王国の女王が残した作品が歌われている。
そう考えて聴くと、単なる映画音楽とは少し違った見方ができます。
ハワイ王朝とフラ、そして王族が残した音楽については、「ハワイ王朝とフラダンスの歴史|王族が守り育てたハワイ文化」でも紹介しています。
視聴ポイント⑤|ラストを彩るHawaiian Wedding Song
『ブルー・ハワイ』を代表する場面の一つが、物語終盤に描かれる結婚式です。
舞台となったのは、カウアイ島のココ・パームス・リゾート。
花に彩られた南国らしい風景の中で、エルヴィスが「Hawaiian Wedding Song」を歌う場面は、映画を象徴するシーンとして知られています。
この曲には興味深い背景があります。
英語版「Hawaiian Wedding Song」のもとになったのは、ハワイの作曲家Charles E. King(チャールズ・E・キング)による「Ke Kali Nei Au」です。
後に英語詞が加えられ、「Hawaiian Wedding Song」として世界的に知られるようになりました。
つまり、このシーンではハワイで生まれた音楽と、アメリカのポピュラー音楽文化が重なり合っています。
ただ「結婚式のきれいな歌」として聴くだけでなく、原曲の歴史まで知ってから聞くと、より興味深く感じられるでしょう。
1960年代の「観光地ハワイ」を見るのも面白い
『ブルー・ハワイ』が公開されたのは1961年です。
ハワイがアメリカ50番目の州となった1959年から、まだ間もない時代でした。
その頃のハワイは、アメリカ本土から訪れる旅行者にとって、急速に人気が高まっていた観光地でもあります。
映画には、当時の人々が憧れたハワイのイメージがたくさん登場します。
- 青い海と美しいビーチ
- 椰子の木が並ぶ南国の風景
- リゾートホテル
- アロハシャツ
- ウクレレ
- 花のレイ
- ハワイアンショー
現在ではごく一般的になった「南国リゾートとしてのハワイ」というイメージが、当時どのように世界へ広まっていったのかを見ることもできます。
『ブルー・ハワイ』の人気は、こうしたハワイ観光のイメージ形成にも大きな影響を与えました。
映画に描かれたハワイと、本来のフラ文化は分けて考えよう
『ブルー・ハワイ』を楽しむことと、ハワイ文化について深く学ぶことは、どちらか一方を選ぶものではありません。
映画は映画として楽しみながら、「ここに描かれているハワイがすべてではない」と知っておくことが大切です。
フラには、映画だけでは見えてこない長い歴史があります。
メレ。
オリ。
神話。
王族。
土地。
ハワイ語。
そして、クムフラから次の世代へ受け継がれてきたハーラウの系譜。
そうした背景を知ることで、映画の中に登場する「ハワイらしさ」と、ハワイの人々が大切に受け継いできた文化との違いも見えてきます。
フラそのものの歴史については、「フラダンスの歴史と起源|弾圧と復興を越えて受け継がれたハワイ文化」もあわせてご覧ください。
昔の映画だからこそ見えるフラの変化
『ブルー・ハワイ』が公開されてから、すでに半世紀以上が過ぎています。
そのため現在見ると、「昔の映画だな」と感じる場面も多くあります。
しかし、それこそがこの作品を見る楽しさでもあります。
例えば、現在自分が習っているフラと、映画に登場する踊りを比べてみる。
衣装の違いを見る。
ステップやハンドモーションを見る。
観光客に向けて、フラがどのように演出されていたのかを見る。
そうした視点を持つと、フラが時代によってどのように見せられ、受け取られてきたのかを考えるきっかけになります。
エルヴィスとハワイの関係にも注目
エルヴィス・プレスリーとハワイの関係は、『ブルー・ハワイ』だけでは終わりません。
その後もハワイを舞台にした映画に出演し、1973年にはホノルルから世界へ衛星中継されたコンサート「Aloha from Hawaii via Satellite」を開催しました。
エルヴィスの存在によって、ハワイの景色や音楽に興味を持った人も世界中にいたことでしょう。
その意味では、『ブルー・ハワイ』は単なる一作品というだけでなく、20世紀のポップカルチャーの中でハワイのイメージを広げた映画の一つでもあります。
今見るからこそ面白い『ブルー・ハワイ』
現在『ブルー・ハワイ』を見るなら、いくつもの楽しみ方があります。
- エルヴィス・プレスリーの音楽を楽しむ
- 1960年代のオアフ島やカウアイ島を見る
- 当時のホテルや観光文化を見る
- フラやハワイアンショーの演出を見る
- 現在習っているフラと比べてみる
- 映画が描いた「ハワイ像」を考えてみる
一つのミュージカル映画として気軽に楽しむこともできますし、ハワイ文化の変化を考える資料として見ることもできます。
フラを学んでいる方なら、以前とは少し違った視点で楽しめるかもしれません。
まとめ|『ブルー・ハワイ』から1960年代のフラとハワイを楽しもう
『ブルー・ハワイ』のフラダンスを見るときは、伝統的なフラの記録映像として見るのではなく、1960年代のハリウッド映画がフラやハワイをどのように表現していたのかに注目すると、さらに面白くなります。
エルヴィス・プレスリーの音楽、オアフ島やカウアイ島の美しい風景、華やかなハワイアンショー。
そこには、当時世界中の人々が憧れた「南国ハワイ」の姿があります。
一方で、Aloha ʻOeやHawaiian Wedding Songの背景まで知ると、その中から本当のハワイ音楽史へつながる入口も見つかります。
映画を楽しんだあとに、登場した一曲やフラの歴史についてもう一歩調べてみる。
そうすると、『ブルー・ハワイ』は単なる懐かしい映画ではなく、ハワイの文化や歴史について知るきっかけにもなります。
フラを学んでいる方も、ハワイやエルヴィスが好きな方も、音楽と美しい景色を楽しみながら、1960年代のハワイへ少しだけ旅してみてはいかがでしょうか。