イプとは?フラで使う楽器の意味・種類(イプヘケとの違い)・音の出し方入門
導入|「イプの音」でフラが変わる
フラのレッスンで、コツコツ…と乾いた音が響くと、空気がすっと締まる瞬間があります。
その音を生むのが、ハワイの伝統打楽器「イプ(ʻIpu)」です。
歌に合わせてリズムを刻むだけでなく、場を整え、踊り手の呼吸をそろえる力もある──それがイプの魅力。
この記事では、イプの意味、種類、イプヘケとの違い、そして初心者さんでもできる音の出し方をやさしくまとめます。
背景や起源|イプは“ひょうたん”から生まれた楽器
イプは、乾燥させたひょうたん(ウリ)をくり抜いて作る、ハワイの伝統的な打楽器です。
古くから、踊りや儀式、詠唱(オリ)やメレの伴奏として用いられてきました。
木や金属ではなく「植物」でできた楽器という点も、自然と共に生きるハワイらしさを感じさせます。
ひょうたんの形・厚み・乾き具合によって音が変わるため、一本一本が少しずつ違う“個性”を持つのも特徴です。
意味・役割|イプはリズムだけじゃない
フラにおけるイプは、ただテンポを取るだけの道具ではありません。
イプの音は「合図」になり、「集中」を生み、「場の空気」を整える役割も担います。
- 踊り手の呼吸をそろえる:同じビートを共有すると動きが揃いやすい
- メレの言葉を立てる:歌の“言葉の強弱”をリズムで支える
- 場を整える:稽古のはじまり・切り替えの合図として響く
「音が鳴ると背すじが伸びる」──そんな感覚を持つ人が多いのも、イプならではです。
種類|イプとイプヘケの違いをやさしく整理
初心者さんが混乱しやすいのが「イプ」と「イプヘケ」。
違いはシンプルで、基本は“ひょうたんの形”です。
イプ(ʻIpu)
- ひょうたん1つで作られる
- 軽くて扱いやすい(入門向き)
- 音は比較的シンプルで、輪郭が出やすい
イプヘケ(ʻIpu Heke)
- ひょうたん2つを接合して作られる(上が小さく、下が大きい形)
- 共鳴が大きく、音量と深みが出やすい
- 重さがあり、演奏に安定感と体の使い方が必要
まずはイプで「叩き分け」を覚え、慣れてきたらイプヘケへ──という流れが安心です。
音の出し方入門|まずは2つの基本音から
イプは難しそうに見えて、最初は「2つの音」を出せればOKです。
ポイントは、力ではなく「当て方」と「支え方」。
低い音(ドン)を出すコツ
- 床(または膝の上)に、底面をまっすぐ当てる
- 手首のスナップで落とし、余計に押しつけない
- 音が詰まるときは、底面がしっかり平らに当たっているか確認
高い音(カッ)を出すコツ
- 側面または口の縁(リム)を、指先〜手のひらで軽く叩く
- “当ててすぐ離す”と輪郭が出る
- 指が寝ていると音がぼやけるので、指先の角度を意識
初心者さんの練習メニュー(3分)
- ドン…ドン…(ゆっくり4回)
- カッ…カッ…(ゆっくり4回)
- ドン・カッ・ドン・カッ(交互に8回)
この「交互」が安定すると、フラの伴奏に一気に近づきます。
よくあるつまずき|音が出ない原因はここ
- 音がこもる:押しつけすぎ/当てたまま止めている → “当てて離す”へ
- 手が痛い:力任せ/角度が悪い → 手首スナップ+当てる面を見直す
- テンポが走る:緊張で早くなる → 声に出して数える(1・2・3・4)
- 音が小さい:恐る恐る叩く → “落とす”感覚で、短くしっかり当てる
現在の文化・暮らしとのつながり|イプがあるとレッスンが深くなる
今のハワイでも、イプはフラやオリの場で大切に使われています。
そして日本のフラレッスンでも、イプを取り入れるとメリットがたくさんあります。
- リズム感が育つ(ステップが安定しやすい)
- “間(ま)”を感じられる(動きの余韻が美しくなる)
- 集中が整う(踊りに気持ちが入りやすい)
踊るだけでは気づきにくい「曲の骨格」を、イプが教えてくれることがあります。
まとめ|イプは“リズム”と“心”をつなぐ楽器
イプは、ひょうたんから生まれたハワイの伝統打楽器。
イプヘケとの違いを知り、まずは低い音(ドン)と高い音(カッ)を出せるようになるだけで、フラの世界がぐっと立体的に感じられます。
力ではなく、当て方と呼吸。
イプの音を味方にして、踊りの土台を少しずつ育てていきましょう。