フラダンサーが大切にするハワイ語のことわざとは?踊りに込められた想い
フラを踊るとき、ただ体を動かすだけでは足りません。
心の深いところで祈るような気持ちを込める——それが本当のフラだと、教えてくれる人がいます。
その想いの芯にあるのが、ハワイ語のことわざ(ʻŌlelo Noʻeau)。
長い年月の中で育まれ、口伝えに守られてきた言葉たちは、
今もフラダンサーの心に静かに息づいています。
“言葉”と“踊り”がひとつだった頃
ハワイの古代、書き言葉を持たなかった人々は、
歴史や物語、教訓をフラというかたちで語ってきました。
そのためフラの一振り一振りは、
言葉を体で語る行為でもあります。
そこに添えられるのが、古くからのことわざ。
ひとつの短いフレーズが、踊る人の心を整え、舞台の前に静かな芯を作ってくれるのです。
ダンサーが大切にすることわざたち
① ʻIke aku, ʻike mai, kōkua aku, kōkua mai
意味:見て、見られて、助けて、助けられて。
フラの仲間との関係に通じる言葉。
練習の場でも本番でも、互いを尊重し、支え合う気持ちが踊りににじみ出ます。
② Kuhi no ka lima, hele no ka maka
意味:手が語れば、目もそれに従う。
フラにおいて、手の動きは“語り”そのもの。
目線や心もそこに寄り添い、観る人の心に届く踊りになるのです。
③ Hoʻokanaka
意味:誠実に、堂々と人として生きる。
フラの中に、人としての在り方が映る——
そんな覚悟と謙虚さを持って舞うことが、ダンサーにとっての誇りでもあります。
踊りが祈りに変わるとき
舞台に立つ前、フラダンサーは静かに目を閉じて、心を整えます。
唇の奥でそっと唱えるのは、フラを導くカプナ(長老)や、祖先たちから伝わることば。
言葉は声にならずとも、動きの中に宿ります。
ハワイ語のことわざは、踊りを祈りに変える“扉”のような存在。
その扉をひとつずつ開いていくことで、
観る人の心にも何か温かいものが届くのかもしれません。
ことばと踊りがつなぐ心
あなたがもし、フラの踊りに心を動かされたことがあるなら——
それはきっと、そこに宿る言葉の力を感じたからかもしれません。
踊りは風のように過ぎてゆきます。けれど、そこに込められたことばは、
ふとした瞬間に、そっと心を照らしてくれるはずです。
今日という日が、誰かの「踊りの意味」に気づく日となりますように。